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「フレム! ちょうど良かった」
「何かあったの?」
「ラーリングさんの顔色が悪かったから、フレムに相談しようと思ってたんだ。本人は寝れば良くなるって言ったけど、フェイバーさんに頼った方が良いのかな? と思って」
それを聞いて頭を過ぎったのは、連絡がつかないWPPOとラーリングの魔力を糧にしているキアの存在だった。もし接触したのなら、状況によって魔法を使用した可能性がある。
「いや、心当たりがあるから俺に任せて」
ちょうど回復した魔力が身体に収まりきれなかったので、身を守るためにもラーリングに少々魔力を譲ってから出発しようと思っていたところだ。
それに現状を医師に診せたら、恐らくドクターストップがかかって……。どう考えても施設に影響が出るので、必要最低限の仕事は出来る環境下にいて欲しい。俺は教えてくれたグレイに親指を立てて明るく振る舞うと、駆け足でラーリングが居る部屋に向かい。礼儀として、ノックしてから入室した。
「おはよう、出発する前に会いに来たよ」
「フレムさん……。来ると思いましたよ」
グレイの話の通り、顔色は余りよろしくない。
でも思考にまだ余裕があるようで、掛け布団を背もたれ代わりにベッドの上で寛いでいた。
「WPPOに連絡したいことがあったんだけど、繋がりそうにないから。身体に収まりきれない魔力を譲る代わりに、何か教えてくれないかな?」
「上手いことい言って……。キアの居所ですか?」
「うん。WPPOと接触してるのかな? と思って」
どこまでラーリングが知っているのか分からないけど、話の流れから察してくれた彼の表情が穏やかにみえたので、ストレートに俺が尋ねてみると素直に応えてくれる。
「そこまでは分かりませんけど、回復しきる前にごっそり魔力を持っていかれました。……今までそんな事なかったのに……」
「それは、あっても事前連絡があったってこと?」
「そうですね。避けられない戦闘だったり、人助けする前には必ず」
――と、此処で何か思い出したらしく。顎に右手を添えた後、ポツリとラーリングは言う。
「そう言えば、音信不通になる前に〈ゴメン〉と言われたような気が……」
「テレパシーで?」
「はい。でも記憶があやふやで……。すみません」
「いいよ。当時ラーリングも大変だったこと、俺は知ってるからね」
大体気持ちに余裕が無い時程、周りの事なんてどうでも良くなるもんだし……。友達だからと言って、何かしら出来るとは限らない。
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