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「こうなると、フレムの評価によってLiderの対応が変わってくるんやろな」
「そうだね。それに真相を深掘りする程、この世界の闇を知ることになるかもしれない」
つまり俺は、今まで都合の良い此の世界の綺麗なところを見ていたんだろう。ーー否。
今まで見て見ぬ振りをしてこれたのは、周りの気遣いがあったり、事を荒立てないよう避けて通って来たからに過ぎない。
一定の距離を保つことで危険から我が身を守り、必要以上の関係はトラブルになるからと避けてしまうのは、英里として厳しい現実を乗り切るために必要な事だったから……。
でも、今は英里として生きる必要はない。
記憶が不十分で新たな価値観に振り回されぱなしだが、魔法が使えるようになって気が大きくなってきている。
現に今、リスクを考えても英里だった頃程の恐怖を感じなくなって逆に戸惑った。その慢心が身を滅ぼす切っ掛けになってしまう事ぐらい分かってるはずなのに__。
「まぁ今考えても拉致あかへんやろ。フレムだけの問題じゃあらへんしな」
「そうだね。未遂に終わったにせよ。危うくフレムの弱味を握られるところだったから、何かしら対策を立てないと」
「そうやな」
「でもグレイは此の世界の住人だよね? 秘密裏にスパイとして採用しかったからとか、何か別の思惑はないの?」
二人の心遣いは有難いが、これ以上独りになる時間を削られると気疲れしそうなので。飛躍的な発想ではあるが、有り得そうな可能性を提示すると、ウォームとストームは突如黙って顔を見合せて__。
「相変わらず凄い発想力だね」
「バレるのも時間の問題やし、もうえぇやろ。グレイは、そのためにワイ等の施設に派遣された公務員や」
「公務員?」
俺が知ってる公務員とは全然違うと思うが、ストームの発言にオウム返しすると、今度はウォームが事情説明をしてくれる。
「彼は身内がいない事から、スパイに抜擢されたようなんだけど……。訓練された人種じゃないから、1ヶ月もしない内にバレてね。すでに二重スパイ状態なんだよ」
「上司はレディウスさんらしいで」
「あ~、通りで耳に入るのが早いと思った」
人伝に情報を又聞きしてる割りには、やたら行動が早いのでも警戒はしてたけど……。灯台もと暗しとは、まさにこの事だ。
「ん? じゃあもしかして……。俺の管轄から外されると気付いたから用無しに?」
普段優しい人程怖いと言うし、二重スパイと言うことは、Liderの情報もウォーム達に漏れているってことだ。
包囲されたと聞くし、俺がムンクの叫びの如く青ざめる反応を見せると、右手を軽く左右に振ったストームが否定する。
「それは無いと思うで」
「恐らく教皇の方針に反対してる者が、フレムの情報を得ようとしてたんだと思うよ」
「それって、おもいっきしLiderの抗争に巻き込まれる前兆だよね? イヤだよ、俺。ラーリングの約束だってあるのに」
グレイの事は友達だと思っているが、此処でラーリングをほったらかしにすると信用を失うと判断した俺は、両手でバツを示しながら関わりを拒否した。
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