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「なんか心配かけてばかりでゴメンね」
「そんな事ないよ。むしろ大切な友達を紹介してもらって、嬉しいぐらいだから気にしないで」
「でもグレイの扱いが元に戻ってるような?」
そりゃあ俺の命が狙われ、グレイも同胞に襲われた事もあって、助手として俺の傍にいるのは危ないんじゃないかって話を――。
「もしかして解にっ」
「まだされてないよ」
俺が言い切る前に即答するグレイ。
でも清掃員の仕事で、両立しようとすると働きっぱなしになるから昇進したのに……。不思議に思っていると、グレイは持ってたデッキブラシを持ち替えて少々困った様子で応える。
「ちょっとストーム様とウォーム様が、そろってブチ切れ案件が起きてね。大量解雇で人手不足なったから、一時的な処置ってことで」
「いつの間に?」
「フレムが部屋から出てこれなかった時だよ」
「あ〜、あの時か」
スフォームが情緒不安定のこともあって、3日間閉鎖的空間にいたので知るはずもない。それに解雇でなければ、事後報告でも問題無いとか思われてそうである。
「それより召集かかってたりしない? 大丈夫?」
「大丈夫じゃない!」
この間に用を終えた俺は、手を洗って――。
「また後で!」
「うん!」
慌てて出て行く俺に向かって約束を取付けるグレイに返事をすると、出入り口で待っていた鳳炎達と合流して屋上へ向かった。
すると警備担当ぽそうなLiderの方々と立ち話していたストームが、駆け足でやってきた俺達に気付いて声をかける。
「おっ、待っとったで」
「今何時?」
「12時50分過ぎたとこや。集合場所は、東門の前やと聞いとるで」
そう言ってストームが指差した方角は、最も白の領域が広がりを見せているであろう南東。引き際さえ間違わなければ、誰一人欠けることなく帰宅する事が出来るであろう最短距離を探索するようだ。
「鳳炎達の視力なら直ぐに分かるはずや」
「つまり飛んで行けと」
俺が風魔法が使えることは、すでに知っての発言なんだろうけど……。使えるからと言って、視覚頼りで手加減出来る炎とは異なり、センスと言う名の感覚頼りで操る風はまだ苦手分野だ。悩まし気な表情を浮かべると、腰に手を添えたストームが助言してくれる。
「不安なら素直に守護竜を頼った方がえぇで」
(ワイは手助け出来そうにあらへんしな)
「そうするよ」
(体調悪いの?)
(知っとることやろ?)
「気ぃ付けてな」
何をとは敢えて尋ねないけど、ストームのテレパシーに応じると、意味深な回答で見送ってくれた。
まぁ身元がバレてることは、ウェイクから聞いてるから驚かないけど……。異物として排除されないのは、まだ利用価値があると思われての事だろう。
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