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俺は人ひとり乗せれるサイズになった鳳炎の背に跨ぐと、一旦上昇して滑空体勢を整え。風を纏って移動する龍碑と竜祈と共に、集合場所から少し離れた空スペースに降り立った。
「お待たせしました」
「GOOD Timingだね、フレム」
「今打ち合わせを終えたところですよ」
社交辞令のような気もしたけど、機嫌が良さそうなウォームからして、オリバーとの話し合いに折りが付いたのは間違いなさそうだ。
「前衛は鼻が利く龍碑と竜祈に任せてほしんですけど、問題ありますか?」
「いえ、願ってもない申し出です」
「フレム自身は、鳳炎と一緒に研究員さんと行動を共にしてあげて。僕は戦況に応じて対処するから」
「分かった」
事前にオリバーが偉い人と知っているからこそ、希望を率直に言えるのは楽なものだ。それにウォームの指示で研究員と行動を共にする事となったが、探りを入れてほしいからこその配置だろう。
「オリバーさん。採取の件、どうなりました?」
「問題なく許可が降りましたよ。研究員の2人にもご理解頂いているので、御安心下さい」
ここで同行する研究員を目視すると、俺の視線に気付いた相手が頭を下げてきたので、反射的に軽く一礼を返した。
――凄い若い子だな――
パッと見、ウォーターやセイクより年下に見えるのは、2つに分けた長い茶髪を三つ編みにしてる影響なのか。それとも荷物を抱えた助手ぽい研究員の身長が低すぎて、全体的に若く見えてしまうのか。
とにかくベテランと言えるような経験値は無さそう、というのが第一印象だった。
「色々質問したら迷惑ですかね?」
「そんな事は無いと思いますよ。ただ彼等は、アスタルトの死骸から採取される死石を研究対象としている珍しい部類なので。仲間内から気味が悪いと言われています」
「――罰当たりとかじゃなくて?」
死ぬと黒い死石と化すアナトとは違って、死ねば白の死石と化すアスタルト。てっきり崇拝する理由はそこにあると思ってたんだけど……。
「面白いことを言いますね」
「そうですか? エレクさんから、アスタルトは豊穣の女神と言われてると聞いたもので」
すると少し驚いた反応を見せた三つ編みの研究員が、オリバーと話しながら歩み寄る俺に喜々として声を掛ける。
「随分お詳しいんですね」
「そんなことないですよ。お二人は、普段から野外活動をされていらっしゃるんですか?」
「はい。まぁその、身を守れる範囲で」
素直に肯定したものの、しまったとばかりに言葉を濁す様は可愛いというか。わかり易くて結構だ。
オリバーが推薦しただけのことはあるらしい。
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