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「この度はよろしくお願いします」
「コチラこそ……。あの、ピブルと言います」
「あ、俺の名前はフレム。肩に乗ってるのは、守護竜の鳳炎で」
――と、ここで左横に控えていた竜祈が、前足でちょいちょいと俺の足に軽く触れて知らせる異常。
ピブルの横に控えていた研究員が小刻みに震えながらも、表情に出すまいと必死に耐えていた。
その原因は恐らく、右隣に控えている龍碑が興奮して尻尾を振りに振りまくってるからだろう。
それも辛抱たまらんと足踏みしてるし……。
以前ストームとグレイが、獣や鳥はアナトを連想させると言っていた事を思い出した。
「すみません。大型犬、苦手でしたか?」
「え? あ、ごめんなさい!」
謝罪すると、連れが小刻みに震えている事に気付いたピブルも俺に謝って事情を説明する。
「パブロフは幼い頃、アナト化した両親に襲われた記憶があるんです」
「それは死石治療の過程で?」
「!? フレムさんは、何でもご存知ですね」
「別に何でもって訳じゃないですけど……」
もしかして、知らないのが普通なのか?
相手の反応から余計な事を言ってしまったのは、間違いなさそうだ。一気に周囲の目が集まり、俺は誤魔化し笑いを挟んで、話題を変えようとオリバーに向けて話しかける。
「それより、いい加減出発しないと御迷惑ですよね? すみません、長々と自己紹介してしまって」
「いえ。博識とは聞いてましたが、まさかそこまでご存知とは__。おみそれ致しました」
「止めてください。裏を返せば、それだけウォームに迷惑かけてるってことですから」
て言うか。どうにも此の世界の人は、褒め上手通り越して担ぎ上げるタイプが多いみたいだ。念の為周囲の期待値が上がる前に事実を述べた俺は、外界と切り離す役割を果たしているであろう厚い門構えを見上げた後にウォームに尋ねる。
「ところで先行は?」
「僕だよ」
(方位磁石が使い物にならない場所だから、テレパシーでストームに案内してもらうんだ)
「じゃあ鳳炎は、俺の肩に待機させてもいい?」
(話に夢中になりそうだし)
「勿論。但し龍碑と竜祈の指示は忘れず頼むよ」
「分かった」
つまり今回は、龍碑と竜祈の召喚者として護衛を完遂すれば合格ラインらしい。
俺の所為で随分前置きが長くなってしまったけど、出発する前にオリバーとウォームが目的と注意事項を同行者全員に釘をさしたところで、厚く外界を遮断していた門が開かれた。
「さて。施設周辺は、一度伐採してるから比較的に木々は低いほうだけど。見ての通り、隠れ処がないから気をつけてね」
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