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確かに予想していた森より、人の手が入ってるように見通しが良い森だ。草木もまばらで歩き易い印象だが、木々の高さは建築素材として活用出来る程立派なので決して低い訳では無い。
おまけに足元はコケと落ち葉だらけだし、獣道らしき跡は高い確率で何かと出くわすからと、避けて通るのが異世界ルールのようだ。
「龍碑、竜祈。悪いけど、先行するウォームを見習って先導して。戦闘や狩りが目的じゃないから、危険を察したら伏せて、俺達に隠れるよう教えてくれればOkだからね」
すると了解したとばかりに一吠えした2頭は、率先してウォームの前を歩き始め。何かしら気配があれば立ち止まり、安全であることをウォームが確認すると再び前進を始めた。
「あの、つかぬことをお伺いするんですけど……」
「はい、なんでしょうか?」
「この世界には、アナトやアスタルト以外にも人を襲う生物っているんですか?」
上空から施設を離れる事はあっても、地上からは初めてのことだったので。ウォームを先頭に陣形が整ってきたところを見計らって、顔馴染みのオリバーに尋ねてみると、彼は返答に困ると言わんばかりの表現でピブルに視線を送った。
個人的には、かなり難易度の低い質問だと思ったんだけど……。視線に気付いたピブルも返答に少し悩んだ様子で応えてくれる。
「ん〜、確かにいるにはいるんですが……。裏世界では、アナトの他に陰陽個体の割合が多く。日によって襲われる頻度が違うんですよねー」
「陰陽個体?」
「アナトでもアスタルトでもない、状況に合わせて食す魔石の種類を変えて進化する個体の総称名ですよ。キチュルやガルバ、ダフィラスなんかが有名どころでしょうか」
「あー。あれ、アナトでもアスタルトでまないんだ。エレクさんの書籍に記載されてたから、てっきりアスタルトの部類かと」
「彼をご存知なんですね。実際摂取した死石の量でどちらにでも進化を遂げますから、間違った認識ではないんですよ。言い方を変えれば、アナトにもアスタルトにも成りゆる生物なのですから」
つまり分類はされてるが、アスタルトもアナトも元は同じ生物と言うことなのだろうか?
だとすれば名付け親は、女神の伝承を基に呼び名を選んだのではないかと思ってしまう。なんせアスタルトとアナトは、地域によって呼び名が違うだけの同一人物説がある女神。偶然にしては出来過ぎるし、博物館で見た書籍の作者が異なる時代から来た日本人だとしたら有り得る話だ。
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