第75話/地上探索

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「す、すみません。変なこと聞きました」 「い、いえ。我々としては、どうしてそんな疑問に至ったのか気になるところでして」 「あ〜、その……。単純に言い伝えが本当なら、審判を受ける前の姿があって。人間(ヒト)がアナトになってしまう事象があるのなら、アスタロスになる事もあったりするのかなぁと思いまして」  下手に隠したところで、不信に思われるだけだろうと考えた俺は、苦笑いを零しながらもオリバーの質問に思ったままを伝えた。勿論悪気はないし、知識もないから言ってはいけないことだったのかも判断出来ないので。責められるか、注意される覚悟はあったものの。オリバーを含め、周囲も成程と言わんばかりの奇妙な空気が漂い始める。 「オリバー隊長。そのような話は聞いたことありませんが、廃止された神に選ばれし者の基準は、白の結晶化ではありませんでしたか?」 「あぁ、アレか」 「未だ原因不明と言われる不治の病の事ですよね」  オリバーより若いピブルも知っているという事は、廃止されて数百年レベルの話ではないようだ。  順調に移動を続けながら耳を傾けていると、話を持ちかけた隊員が俺でも分かるように言葉を付け加えてくれる。 「自分は噂程度しか知りませんが、怪我をした訳でもないのに突如結晶化が始まり。昔は神に選ばれし者として、龍神様に供える風習があったそうです」 「龍神様?」 「今で言う龍脈のことですよ。ウォーター様が管理される施設から水面を見下ろすと、時折青白い光が水中を這うように輝いて見える事があるんです」 「へー」  ――見えるものなんだ。  口に出してそこまで言わなかったのは、英里だった世界の感覚で言うと、強力なパワー・スポット的な認識でいたからだ。 「オリバー隊長は、見たことがあるんですか?」  すると部下の何気ない問いかけに、思い詰めた表情で言葉を一端詰まらせた彼は、「(いや)」と応えてから言葉を続ける。 「ただ一度だけ、無き古い風習に付き合った事がある。現在建設中の施設近くに、その名残りが今でも残っているとか」 「もしかして聖域と呼ばれる?」 「ご存知でしたか」 「その時、数年前まで怪我をした訳でもないのに結晶化が進行した人を供えられいた。という話は聞きましたけど、白の結晶化限定というのは初耳です」 「遠い昔は、その現象を〈輝石〉と呼び。この世界に光を齎す力の象徴だったそうです」  それを聞いて次に思い出したのは、グレイに読み聞かせてもらった絵本の内容だ。確か__。  この世界は今だ未完成だからと、神と相談して自由に使えるようになった力を〈輝石〉呼び。アホウな事をして神に一旦没収されたものの、謝罪してまた使えるようにした代わりに条件が付いてたな。
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