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それが事実だとしたら__。
過ちを犯した者は、罰としてアナトになり。
良心を積み重ねた者は、輝石を扱う事が出来る。
――絵本の通りだな――
共通点があるとすれば、どちらも病に侵され。
一方は治療のため死石を口にしてアナトとなり、もう一方は死を受け入れて崇められた事か。
「因みにその輝石というのは、白の死石とは違う物なんですか?」
「いや、白の死石のことだよ。ただ人の身で、純粋な白の死石になること事態大変珍しいことなんだ」
でも、それだけで崇め讃えるだろうか?
今ひとつ納得いかないのは、矛盾が生じているからだろうけど……。視界に白い木々が見えたところで、一旦考えるのは止めた。今のところ危険はなさそうだけど、白の領域に差し掛かる手前でウォームが引き上げて来る。
「何かありましたか? ウォーム様」
「いや、何も無さ過ぎて不気味なくらいだよ」
「普段ならアナトに遭遇して、戦闘になってても不思議じゃないんですけどね」
「フレム効果かな」
――どんな効果だよ。
冗談が言えるぐらいの余裕があるみたいだけど、立場を弁えて言ってほしいもんだ。明らかに数人真に受けてる奴がいる一方で、ピブルが持ってきた書物を引っ張り出して説明に入る。
「伝承によると、祝福を受けた土地にアナトは容易に繁殖出来ないようです」
「ん? アナトって、繁殖するんですか?」
「個体にもよりますが、ある一定の大きさに達すると、砕けて増えていくタイプが多いですね」
「へー……」
(ヤバい、ストームのとこ大丈夫だろうか)
(そう言う話は聞いていませんけどね)
アナトの新たな生態を知り、急に串刺の刑に処したバルトトスの様子が気になったけど、俺の肩に乗る鳳炎もその手の話は聞いた事がなかったようで。
不安の余りウォームに視線を向けると、俺達の気持ちを察して、にこやかに(問題ないよ)とテレパシーを送ってくれた。
「ところで、祝福を受けた土地って言うのは?」
「恐らく救世主が関係してるものかと」
質問してきたウォームにも見えるよう、ピブルが書籍を広げて挿絵を掲げると、それを横から覗いた俺は直ぐに何を指しているのか理解した。
文字は貰い受けた眼鏡をかけてので読めないものの、挿絵から察するに白い潮の影響を受けた土地を〈白の領域〉と呼んでいるようだ。
「今回は、この挿絵に描かれてる〈祝福の欠片〉を回収するのが目的です」
「だったら、もう少し奥地にいかないと難しいと思うよ。此処は施設から近いけど、大きな群生地から離れた場所に位置するからね」
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