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確かにピブルが望む物を本気で探すなら、救世主の潮が大量に落ちて群生地と化した場所を目指した方が効率が良いだろうけど――。
ウォームが助言した直後、突如重たい物が地上に落ちた音が耳に入って、一気に緊張が高まる。
「近付いて来る気配はないな」
「フレム、龍碑と竜祈を借りるよ」
「うん、気を付けて」
咄嗟に剣を抜いたオリバーだが、それっきり風で靡く葉音しか聞こえない事から、ウォームが龍碑と竜祈を引き連れて確認に走った。
けれど物の数分で姿を現したウォームが手招きしたので、戸惑いながらも誘いに乗って移動すれば、白い巨木の真下に軽自動車程のサイズを誇る。白い何かがヒビ割れた状態で鎮座していた。
「見た感じ、クロックスの死骸だと思うんだけど」
「クロックスって、アスタロスの体液をすすって成長するあの?」
俺は知らないけど、パブロフを始め、周囲の反応からして比較的に遭遇し易い生物なんだろう。
見た目は巨大な蝉だが、ところどころ毛だったんじゃないかと思われる部位は、まるで蜜蜂のようにも見える。
「普通黒い個体なんですけどね」
「まだ数体木にへばり付いてるから気を付けて」
「アレも生きてるようには見えませんね」
「繁殖した形跡もありませんし、白色化した個体は完全に息絶えているかもしれません」
安全が確認されると、早速周囲のクロックスの様子を伺うパブロフと白色化したクロックスの一部を採取するピブル。
俺自身は興味がない訳ではないにしろ、普段の姿が黒ならば、聖域の影響で白くなったぐらいしか理解できなかった。
「フレムさんは採取しないので?」
「はい。普段の様子が分からないので、持って帰ったところでどうしようもないと思うので」
それでも声をかけてきたオリバーの前で、視界に入ったクロックスの遺体の欠片を摘み上げると、そのまま力を込めて砕けるかぐらいは試してみる。
「死石とは違うんですね」
ちょっと固い砂糖の欠片を指先で砕くような感触にも関わらず、手触りは乾いた砂で。地面に落ちたものは、サラッとした手触りの良さを感じる。
「クロックス事態は、アナトに分類されるので。本来黒の死石と見間違う程、硬いんですけどね」
「木にへばり付いてる事は、よくあるんですか?」
「そうですね。羽根を休めたりとか、身を隠しでたりする姿は見たことありますけど……。ストローを突き刺してるところは初めてみます」
「え?」
「ほら、あそこ。折れた枝みたいなモノが突き刺さっているのが分かりますか?」
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