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第66話/溢れ出す裏事情
それから一時間半経過し、いい加減連絡してくれないと不安で堪らなくなった午後四時半を過ぎた頃。ピンポンと呼び鈴が鳴って、期待と不安でそわそわする俺とグレイ。
けど玄関モニターを確認しに席を立ったムグルは、困惑した表情を浮かべて対応する。
「はい、どちら様でしょうか?」
つまり尋ねて来た人物は、ムグルにとって面識の無い相手。しかもモニターに写し出された様子から機器に不慣れと判断したようで、返答の無い相手に「暫くお待ち下さい」と案内してからマイクを切った。
「二人共、顔を出さないようにね」
「え、ウォーム達じゃないの?」
「違うよ。Liderによく似た白いローブを着てる人達だけだったから」
すると此の世界出身者のグレイが、尋ねて来た人が誰だか分かったらしく。対応に向かおうとするムグルに戸惑いと不安の顔色を浮かべて確認する。
「それってもしかして、教皇の御使い様じゃないですか?」
「御使い?」
「うん、七芒星のバッチが付いていたら確実だよ。無下な扱いをすると大変なことになるんで、対応には十分気をつけて下さい」
俺がオウム返しすると、基本的な見分け方を教えてくれたグレイは、最後に険しい表情でムグルに忠告。恐らく、教皇と同じように敬われている存在なのだろう。
そんなグレイに「分かった」と答えたムグルは、「念のため、フレム君はルシウェルさんに連絡してくれないかな?」と、首をかしげた俺に向けて言った後、軽くゼスチャー。
どうやら受け取った名刺を頼りに、俺からLiderへ連絡してみないと、物事がスマートに運ばないと見込み済みのようだ。
「電話借りてもいいんですか?」
「どうぞ」
正直電話対応は大の苦手で、内心気が進まないけど駄々をこねてる場合ではない。自分の名を出せば本人が出てくるはずだと、心の中で言い聞かせながら受話器を取り、名刺片手にプッシュボタンを押すが__。
____。
相手が出てこない事には始まらない。
ずっと電話を鳴らすのも悪いので、2回目、3回目と掛け直すが、一向に相手が出る気配がなかった。
ーーよっぽどの出来事だったんだろうか?
相手の状況が分からないので、気遣いの仕様もなく。時間稼ぎしてくれてるムグルの立場を考えると、罪悪感すら芽生えてくる。
ーーどうする?
一応身の守り方は習ったし、鳳炎も一緒なら何とかなるかもしれない。10回目のかけ直しで、すでに5分は経過している。
これ以上相手を待たせるような事があれば、WPの立場が悪くなってしまうだろう。
俺は、腹をくくり___
受話器を本体へ戻すと、それを待ってたかのように電話が鳴り響き。戸惑う俺に代わって、レナが受話器を取った。
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