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第67話/独り立ちの第一歩
ーー次の日。
朝食を終えた俺は、早速ウォームにWPPOの連絡先を教えてもらって電話した。
すると、3コールで出てきたのはムグル。
仕事終わりが遅かった事もあって、グレイとムグル以外はまだ夢の中らしい。
{それで安全は確認出来たの?}
「それがウォームの話によると、どうもLiderの内輪揉めに巻き込まれたみたいでさ。事情を知らない俺に謝られても困るし、ウォーム達が同席してくれるようだから。話し合いは当事者に任せて、俺は約束を果たすために帰ろうかと思って」
{まぁその方がいいかもしれないね}
しかし、ふと視線を感じで振り返ってみれば、ルシウェルが見覚えのある部下を連れて立っていた。どうやら俺が席を外そうとしてる事がバレたらしい。
{迎えは何時来れそうなの?}
「それが……。つい先程、ルシウェルさんがご到着されられたみたいで」
{先を越されたんだね?}
「うん」
壁に耳有り障子に目ありとは、正にこの事なんだろう。こういう時こそ、テレパシーで会話するか。冗談半分だったにしても、逃げるとか言わなければ良かった。
ウォームとストームが対応しているが、長時間宿に拘束するのは申し訳ないと思い。急ぎ顔を出してくれたらしい。
{御愁傷様}
「それでも約束事があるから、長居するつもりはないけどね}
{そうなんだ。グレイ君に変わろうか?}
「いや、いいです。これ以上、余計な疑いを増やしても迷惑なだけだろうし……。予定狂ったんで、素直にかけ直します」
{それじゃあ予定が急変するようなら、鳳炎経由で宜しく}
つまり、テレパシーによる連絡を催促しているのだろう。俺がもうちょい以心伝心を上手く活用出来れば、鳳炎の手を煩らわせる事はないんだけど……。
意地を張ってる場合でもないので、素直に
「分かりました」と返答した。
{まぁ何も無いのが一番だけどね}
「同感です」
{とりあえず、此方は今のところ異常はないから安心して}
「良かった。それじゃあグレイのこと、今暫く宜しくお願いします」
{気を付けてね}
最後にムグルは、相手の身を案ずるように忠告すると、俺が相槌をうって受話器を置くまで電話を切らなかった。
「お待たせしました」
用心深く受話器を置いた後、Liderと少し離れた所で待っていった一行に詫びを添えて駆け寄ってみると、すでに心理戦が始まっているようで……。営業スマイルとしか言い様のない愛想に迎えられた俺は、嫌な予感と共に胃が軋み始める。
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