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第75話/地上探索
――あ〜、なんか悪い予感がするな――
本塔へと繋がる連絡通路を歩きながら、ラーリングがスフォームを気にして話さない理由として、黒幕を知ってるからのような気がしてならない。
それもラーリングのためにやってる事だとしたら、俺が何言っても綺麗事だと聞き流されるイメージしか出来ないんだけど……。
――どうしたもんかな――
英里だった頃、兄弟喧嘩はよくしてたものの。いつの間にかどうでもよくなって、仲直りした経緯ぐらいしか思い出せないし……。当事者じゃないこともあって、どちらが悪いとも言えない。
暫く悶々と悩み、一向に解決策を見い出せなかった俺は、食堂で昼飯を食べる頃には考えるのを止めてしまっていた。
(御主人、13時には出発するそうです)
(何処に行けばいいんだろ?)
(食堂から歩いて向かうと距離があるので、屋上から集合場所まで飛んで来ればいいとの事ですが)
(簡単に言ってくれるね)
詰まる所、屋上で待機してるストームに聞けといったところか。モグモグと口を動かしながら鳳炎とテレパシーを交わした俺は、足元で食事していた龍碑と竜祈の様子を確認してから立ち上がった。
(手ぶらでいいのかな?)
(歩いて1時間もしない場所を探索するそうですよ)
(じゃあ水筒なんかも必要ない?)
(全てあちらが用意してくれるそうです)
(それは有り難いね)
食事を終えた自分の食器とは別に相棒分の皿を重ねると、一言「ご馳走さまでした」と伝えて食器を返却。意味は通じてないかもしれないけど、日本人としての礼儀は今も忘れていないつもりだ。
(さて。向かう前にお手洗いに行って、グレイに一言伝えてから出発したいところだけど)
此処は異世界で、獣類はアナトを連想させられる事から怖がられている。加えて、呼び出しをくらってるのに人探しで遅刻とか笑えないし……。
考えた末、出発前に会うのは断念して手洗いに向うと、ちょうど立ち寄ったトイレ掃除をグレイが担当しているんだから運命的なものを感じた。
「使ってもいい?」
「どうぞ」
まだ周囲の目を気にしてしまうことから、内容問わず個室を利用する俺に対し、おちょくることはしないグレイはホント神だと思う。
「ラーリングさんに会ってきたの?」
「うん、配膳はグレイ担当?」
「そうなると思うけど」
「食事量は確認してみて。体調が悪そうに見えたのは、魔力不足の所為で病気じゃないから」
「そうなんだ、よかったぁ~」
この間に用を済ませてしまうが、グレイの口振りからして。何の説明がなくても、ウォーム達がラーリングと上手くいってないのは察してるようだ。
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