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今どこにいますか?
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『今どこにいる?』
『もう劇場の前には着いてるけど。関係者入口ってどこから入ればいいの?』
『今何が見える?』
『チケットカウンターと、でっかいポスターの明日香』
『あーそれ正面入口だね、お客さんにバレちゃうからさすがに迎えに行けない…左の駐車場の方から回ってくれば入れるはず、わかりそ?』
『駐車場はわかるから向かうね。人多いし、劇場大きすぎ、入口見つけられなくて遅刻したらごめん』
『いやいや、主演の来賓なんだから遅れないで!わかんなかったら、次は電話して!』
『りょうかい』
劇場の入口に貼られた、大きなポスターを見上げるとシリアスな顔をした明日香が一面に写っている。
スマホを掲げて、大きなポスターとすっきりと晴れた青空を写真に収める。
1月の空は澄み渡ってどこまでも高い。
大きく伸びをし建物横の階段を少し下ったところにある駐車場へ向かって、ゆっくりと歩き出す。
都心の劇場は車で来る人は少ないようで、まばらに高級そうな車が止まっている。
「さーーおーーりぃーーー」
思わず上がってしまった口角を何とか真っ直ぐに戻しながら、顔を上げた。
遠くから手を振りよく通る大声で私を呼ぶ幼馴染は、あの頃のまま、何も変わらない。
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