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クラフトはイラストレータで、作家であるシモンの書く小説やらエッセイやらのイラストも多く手がけ、共著で絵本も出している。
公私ともに良い相棒だ。
いわゆるそう云う意味で。
シモンが同意の笑みをうかべ、どこ行こー、とか、仕事の調整いるよな、とか、ふたりだけの時間になりそうなのをマスルが阻止した。
このバカップル(死語だっけ?)はすぐ、自分達の世界へ行ってしまうから。
つまんねーじゃん。
せっかく馴染みが集ってんのに。
ロゼの土産話とマスルの女の色気ポイント談義に花が咲き、酒宴がおひらきになったのは日付が変わってからだった。
混沌とした真夜中の街で解散する。
酔ったシモンの軽い体をお姫様だっこして、クラフトは帰宅した。
「クラフト、好き。すげー好き」
「はいはい」
改めて何言ってんだかのネコの服を脱がせるタチ。
やらしい目的じゃない。
寝るときはパジャマ着ようね、が、クラフトへの母からの躾だった。
「う~、のどかわいた」
「スポドリ? ジュースか? トマトの」
「前者」
「はいはい」
冷蔵庫へ向かう広い背中。
肩甲骨の下あたりまであるひとつまとめの長い髪。
前髪作ってないから、おろして雰囲気だすとなんとも言えない色気が漂う。
こだわりのカラスの濡れ羽色だ。
シャンプーのヘアケア成分が髪質にあっているおかげで、さらさら良い匂い。
シモンの髪も同じ香りがする。
こちらは短髪だ。
金髪寄りのあかるい色にしてあって、ヘアワックスで無造作に流して前髪はアメピンなんぞを打ってキメている。
こんなふたりだから、毎朝寝ぐせも怖くねェ。
酔いつぶれたシモンの愛らしさにいつもながら感動して、クラフトは息を漏らす。
それは聞こえて、またやらしい妄想してんなァ、とか、酔っぱらいは思う。
スポーツドリンク飲んだらちょっとすっきりして、シモンはクラフトにじゃれついた。
「動けるんなら歯を磨け」
「クラフト~、旅行、絶対行こな」
「ああ。だからイイ子だから、おまえhw」
短い小言も聞き終わらず、シモンは眠りに落ちていた。
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