手のなか光るビジュ的未来・弐

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 シモンはファイルを保存し、スマホを手にする。  ロゼから着信があった。  残ってた、と、バカルテット現役のころの、つまりは男子高生時代の写メだった。  本当に馬鹿だと思う。  返信をしながら笑ってしまう。  それからせつなくなった。  記憶があんまりにもおぼろげで、儚くて。  時々、あるんだ。  自分には今しかない。  過去も未来もなくて、ただ、ちょっとずつ違う毎日を繰り返すだけで、覚えていられることも忘れられることもなく、地球すら霞のようにはっきりとせず、ある日すべてが雲散霧消してしまうんじゃないだろうか?  広すぎる宇宙の闇に溶け込み、それで終わって、でも、いつかまたどこかで不意に始まり、青い星のかけらとして生きることを繰り返しているんじゃないだろうか?  そんな、今に始まったことじゃないんだけど、脳みその構造としてしかたないみたいな、過剰な妄想に駆られること、が、あるんだ。 「ははは」  クラフトには笑われた。  男子高生にしてバカルテット現役のころ吐露したら笑われた。  ロゼにもマスルにも笑われた。 「いい意味でだって、笑ってんの! なァ、ひー!」 「うはははは! 今度プロテインおごるぞ! 筋肉たらんからンな妄想あんだよ!」 「だー! おめーらいつか呪う!」  まァ結果、呪うどころか掘られたわけだが。  クラフトに。  て、それは合意の上惚れあった上だったから、無問題無問題。  ハジメテは十七才だったな、と、軽めに体が熱くなる。 「嗚呼‥‥青春」  PCの電源を落とし、芝居がかったようにつぶやいてシモンは仕事部屋をあとにした。  そのころ、ロゼとマスルは定食屋に居た。
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