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日直は放課後に当番日誌を記入して担任に提出してオーケーが出れば日直終了となる。よって皆少しでも早く帰りたいと思っているので、日直になることを誰もが嫌う。彼の場合は部活の時間が削られるという理由なのだろうが、多くの者は勉強時間を削られるからという理由だ。
教室内の新しくクラスメートとなった者の多くは、教壇の斜め前の席に向かう松本くんのこの様子を冷たい目で傍観している。あたかも競争相手が一人減ったという見下した空気さえも感じられる世界戦に私たちはいるのだ。そんな空気感を知ってか知らずかは分からないが、山本先生は先程の松本くんの言葉が聞こえていないフリをしたまま、四角い顔にちょっと意地悪な笑みを浮かべながら、
「連絡事項は以上だ。体育館への集合には遅れるな。」
と言って、席に座っている松本くんの机の上に当番日誌をポンと置いて教室を出て行った。
「おい、担任。ちょっと待ってよ。」
という松本くんの懇願する声が教室に響いていた。
うちの高校は県トップの公立の進学校で、年に数人は日本最高峰と言われるあの有名な大学へ進学する。多くの者が3年生になるや否や部活を引退して受験に備えるのだが、部活のエースや現役合格を諦めた一部の者は夏休みまで部活を続行する。彼は後者のように思われるが、理系クラスではどちらの理由にしても希少な存在であることは確かだった。
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