内職詐欺

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家に帰る途中で、娘は寝てしまった。つまんなくて疲れただろう。かわいそうだな。でもまだ半分しか終わっていない。これで本当にお金が入ってくるんだろうか…… 思ったよりずっと大変なことを、身をもって感じた。 次の日、残りを配るため、今度は戸建てがたくさん集まっているところへ行くことにした。そこだけで「○○が丘」と名前がついている密集地だ。 今日は初めから娘は車にのせたまま、自分だけ走るパターンでいこうと決めてきた。戸建てだから、集合ポストに配るのと違って、ポストが離れていて走る距離が多い。娘を連れては無理だからだ。 車に1人残されて不安そうな顔の娘をおいて、車を止めては10軒ほど配り、また車に乗りちょっと移動して止めて、10件配る、を繰り返して、何とか全部配り終えた。車を止める場所を考えたり、娘の様子を気にしたり、やはり2時間くらいかかった。もうぐったりだった。 「さ、帰ろう。待たせてごめん……」 娘は眠っていた。本当にごめんね…… 自分が疲れたことより、娘に申し訳なくて、たまらない気持ちだった。
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