内職詐欺

9/9
前へ
/15ページ
次へ
夫は何かおかしいと気づいていたようだ。帰ってくるなり、突っかかってきた。 「なあ、何やってんだ?30万何に使った?」 「仕事。やる前の契約金。広告配って、注文が入ったら売上の5%もらえるの」 「契約金?そんなの払ったのか?先に金払ってからやる仕事って何だよ?!そんな仕事、あるわけ無いだろ?だいたい、注文なんか来るわけない!騙されたんだよ!」 「来たよ。少ないけど」 「最初に注文があったようにわざと適当に連絡してきたんだよ。その後も入ってくるって思わせるために!その注文だって、こっちじゃなくて向こうの会社に注文がいくなら、本当はどれだけきてるのか、こっちじゃ確認できないだろ?沢山注文があっても、これだけしかありませんでした、だからあなたの売り上げはこれだけです、そう言われたら信じるしかないだろ?向こうの奴らにちょろまかされても、わかんないんだぞ!全く、何してんだ!」 そのとおりだ。返す言葉もない。 確かに本当は10万の注文があっても、私にはわからない。 そうなんだ。騙されたんだ…… 騙された……なんて、仕事の契約だよ…… そんな気持ちがほんの僅かだが残っていた。 それから何年もしてから、これは内職詐欺といわれるものだと知った。 ー 内職詐欺 終 ー
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加