内職詐欺

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内職詐欺

1997年秋 私は26歳、1歳過ぎの娘をもつ専業主婦。 夫は真面目に働いているが、転職して間もないため給料は安い。 ギリギリの生活だ。 もう少し余裕が欲しい。私が働けばいいのだが、娘は歩き始めて可愛い盛り。保育園に預けるなんて、娘の初めてを見逃してしまうのでは、と躊躇している。 どうしようかな… そんな時、1本の電話がかかってきた。 「もしもし、私、マルアイ化粧品の鈴木と申します。奥様でいらっしゃいますか?」 「はい…… 化粧品?」 「マルアイ化粧品と申します。今日は化粧品のお勧めではなく、お仕事してくださる方を募集してまして、順番にお電話させていただいております」 「お仕事?ですか?」 「はい、そうなんです」 「うちは1歳の娘がいるから、今は働きに出るつもりはないです」 「あ、そうなんですね。そういう方でもできるお仕事なんですよ!時間も自由で、ご希望の日数で働いていただけるんです!」 「え?そんな話……」 「そうですよね。信じられないですよね。皆さんそうおっしゃられますよ。でもお話聞いていただければ、ご理解いただけると思います。少しお時間いただけませんか?」 「まあ、聞くだけなら」 「ありがとうございます」 若い女性で、明るい人懐っこい話し方。 時間が自由になる仕事、どんなんだろう? 興味があって聞いてみることにした。
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