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1.
「あの人また来てる。」
「あら〜ほんとねえ。」
俺の声に反応してパートの花絵さんが頬に手を当てた。
「ほんっと!目の保養だわ〜。」
韓国ドラマのイケメン男優を見てる時みたいな顔をしながらこそこそと花絵さんが喋りかけてくるのに苦笑いした。
でも、確かに凄い美形だよな。
俺がこのコンビニバイトを初めて数ヶ月。
毎回決まって夜の0時過ぎ頃に彼はこのコンビニにやってくる。
いつも決まって、ブラックの缶コーヒーと甘いミルクティーのペットボトルをレジに持ってきて一言
「11番3箱。」
というのがお決まりのルーティーンになっていることを覚えてしまったのはいつ頃だったろうか。
俺は11番の棚からセブンスターの7mgを取り出してレジに置いた。
「ありがとうございました〜。」
精算を終えるとすぐにスタスタと立ち去っていく彼からは、いつもタバコの匂いと混ざってとても甘いバニラの香水のような匂いがする。
その残り香が俺は好きだった。
「お疲れ様でしたー。」
「あら〜お疲れ様。いつも遅くまでご苦労さまねえ。はい!これ飴ちゃん。」
花絵さんが俺の手に飴を1つ乗せてくる。
「ありがとうございます。お疲れ様です。」
それを握りしめたまま俺は裏口からコンビニを出た。
「バニラ味…。」
クリーム色のパッケージに書かれた文字を見てあの人の残り香を思い出す。
(明日も来るのかな。)
俺は袋を破って飴を口の中に放るとコロコロと口内で転がしながら自転車を漕いで帰路に着いた。
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