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プレジデントホテルに着いたものの、格式張った入口に気後れして、ロビーに入っても落ち着かなくて、キョロキョロと辺りを見渡してると、
「日置くん、こっちだ」
って貴城社長がエレベーターの前で手を振っていた。
「あっ、貴城社長っ」
目的の相手に会えた事と、不安だった状態からの安堵感で、おれは自然と貴城社長に笑顔を見せていた。
貴城社長は優雅なんだけど、颯爽とした動きでおれの前まで歩いてくると、エスコートするみたいにおれの腰に腕を回してくる。
「え…」
「さぁこっちだ」
戸惑うおれに、フッと笑うとそのまま何もないかのようにエレベーターに乗せられた。
えっ!?いやちょっと…これ普通か?普通なのか?おれエスコートされてないか?
腰にある手は意外と強めに回されてて、少し身じろぎしたぐらいじゃ全然離れそうにないし。
これって離れて下さいって言っていいのか?セクハラ?いやパワハラになるんじゃないか?
「あ、の…」
「うん?どうした、顔が少し赤いな.熱でもあるのか?」
おれに目を落とした貴城社長は、頬の赤さが目についたのか、見当違いな事を言いながら、あろうことかっ!!おでこコツンをしてきたのだっ!
「うぇっ、や、あのっ…は、恥ずかしいので…」
「あ、あぁそうか。外じゃ恥ずかしいよな」
って直ぐに離れてくれたんだけど……外じゃ恥ずかしいって言い方おかしくないか?
外でも中でも恥ずかしいし、して欲しくないし。
チーンと響いたドアベル。エレベーターのドアが開くと、おれはそのままどこかの一室に連れ込まれた。
「えっ!?や、何ですかここっ!?」
突然の豪華な部屋に驚いてると、
「おれの借りているペントハウスだ。ここなら恥ずかしくないだろう?ほらベッドに横になって。熱があると困るだろう?」
って貴城社長が平然と答えて、またもやおれのおでこにコツンをした。
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