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なんだコイツは…。
エレベーターが開くと、人の顔をボケッと見たまま動きもしない。
「おい、邪魔だ。ど真ん中に立ってるな」
そう言えば、顔色を変えて飛び上がるみたいに壁際まで後ずさる。
…こんなヤツがウチに居たか?今年入った新人か?
そんな事を考えてると、不意に鳴り出したスマホアラート。
地震だと身構えた時にはビルが揺れ緊急停止装置が作動してエレベーターが止まった。
後ろからは慌てた声が聞こえて、ライトが消えれば更にパニクった声が響いた。
面倒くせぇ、が放っておけばパニクりすぎてこの狭い中で暴れられても迷惑だ。
スマホの明かりを頼りに腕を掴み引き寄せれば、余計に慌てて離れようとする。
「いいか落ち着け。おれの心臓の音だけを聞いてろ」
胸元に頭を抱え込めば、震えながらも大人しくおれにしがみついてきた。
小さくはないが、抱き締めた時にスッポリと腕に収まる体。
女みたいな柔らかさはないが、しなやかな身体付きに何故か腰を抱く腕に力を入れたくなった。
コイツ、男のくせに腰のラインがエロいな。
抱き締めれば、張り返すしなやかな筋肉を手のひらに感じながらそんな事を考えていた。
フッ、と点灯したライトにエレベーター内が照らされる。
視線を落とせば、すぐ間近に瞬きを繰り返す男の顔があった。
近さに驚いたのか目を見開き、その後に顔を赤らめ、おれのスーツを握り締める自分の手を見て、顔色を青ざめさせた。
面白い程に考えてる事が丸わかりだ。
「よくもまあ、そこまで表情が変わるもんだな」
おれがそう言えば、青ざめた顔から一転、恥ずかしさからか顔を赤く染め、涙を滲ませた目でおれを見上げてくる。
その顔にズクン、と下腹が疼く。
「は…」
なんだこの反応は…。
自分自身に起きた反応が、欲情のソレだと気がついて、愕然と男を見下ろした。
「お前…」
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