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 僕の名前は谷村駿。小学4年生になったばかり。  担任の並木健人先生は2年生の時から引き続きで、お兄さんみたいな先生のクラスになってラッキーと思っていたところだった。  並木先生は背が高くて、色が黒くて、スポーツマン。とても気配りしてくれて、優しい。  教え方は上手じゃないかもしれないけれど、とにかく楽しくて、面白くて、人気がある。  お昼休みに真剣に遊んでくれるから、他のクラスの4年生だけではなく、別の学年の人も集まってドッチボールや大縄跳び、鬼ごっことかをする。  僕は少し運動が得意。並木先生は爽やかな笑顔で褒めてくれる。 「谷村くんはすばしっこいなー。何かスポーツしようよ」  先生は野球部の顧問をしている。4年生になったし、野球部に入りたいと思っていた。  お母さんに話して、お父さんにも話して、どちらもいいよって言ってくれたから、明日、学校に行ったら並木先生に言うつもりだったんだ。  きっと先生はにっこり笑って、僕の頭を撫でてくれる。 『そうか、谷村くんは足が速いからな。一緒に楽しくやろうな』  最初は走ったり、ボール拾いしたりくらいかもしれないけれど、いつも笑い声が絶えない部活だから、僕も頑張るんだ。  明日になったら、先生に会って、野球部に入るんだ。僕はワクワクしながらお布団に入ったんだ。  なのに、目が覚めると僕はおばあさんの中に閉じ込められていた。意味がわからない。  おばあさんは一日中、訳の分からないことを言いながら探し物をしたり、怒ったり、泣いたりしている。  喉が渇いても、お腹が空いてもおばあさんはほとんど何も口にしない。ちゃんと布団に入って眠ることもない。  僕は学校に行きたいのに。  明日はお母さんがハンバーグを作ってくれるはずだったのに。  週末はお父さんがグローブを買いに連れて行ってくれるはずだったのに。  僕はもう帰れないの?
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