10~犠牲の先に

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10~犠牲の先に

 マシューの右手がインプにもぎ取られた…… ボタボタ っと、床に血が飛び散った。 それと、ほぼ同時にエリックは、エクソシストの持っていた剣で胸を一突きにされた。 「「エリックッ!!」」 皆は、叫んだッ! エリックは、膝をつきそのまま前へ倒れ息絶えた。 床に血だまりが広がる インプは、呆然と立ち尽くしているエルをサッと抱え込みアッシュレイに 「走れッ!」 っと叫んだ! インプとアッシュレイは、霊安室を抜けて蓋穴に足から飛び込むと追っ手から逃げきる為にただひたすら迷路のような地下水道の中を宛もなく走った。 「インプ……」 エルは、インプに抱き抱えられながら呟いた。 追っ手は、すぐ後ろに迫ってきていた。 「エル…… 平気か?」 インプは、走り続けながら訊いた。 「二人とも鼻と目を閉じて……」 エルは、インプに抱えられたまま懐から催涙弾を一つ取り出すとおもいっきり追っ手来ていた後ろのエクソシスト達へそれを投げつけたッ! 辺りは、真っ白な煙でつつまれた…… ……「くっそっ! 鼻と目をやられたッ!」 辺りにエクソシスト達の苦痛の声が響いた。 この隙に、エル達は進路をぐるりと道をまわり、エクソシスト達にばれぬように後ろ回り込んだ。そして、脇道に身を隠した。 煙が収まってきてエクソシスト達が前へと進んで行くのを伺っていたインプは、 「行ったようだな」 っと、言うと上へと上がる梯子へ足をかけたのだった。 ―☆―☆―☆― マンホールを開け、外に出るとそこは隣町の町外れだった。 「何とか出られたが、これからどうする?」 インプがアッシュレイに訊く。 「とりあえず、俺は仲間の集まるカトリック大聖堂へ連絡をなんとかしてとりたい」 アッシュレイは、息を切れ切れにしながら膝に手を置いて言った。 「あそこまでは、そこそこ距離もあるし何か良い連絡手段でもあるのか?」 「連絡手段は、ないが道中いくつか頼れる奴らがいる。君たちも少しでも休んだ方が良いそこまで一緒に行動しないか? 追っ手は、我々を血眼になって探しているし野宿よりはましだぞ」 アッシュレイは、さっきから一言も言葉を発しないエルの様子を心配してくれている。 インプは、エルの右腕を無造作につかむと 「俺達も行くぞ」 っと、言った。 エルは、ただそれに「うん」っと頷いた。 皆は、朝露で湿っている草むらの中を進んで行く。 エリックが亡くなって気持ちが沈んでいるのは、わかる……が、顔色が悪すぎる。 インプは、エルの額に手をあてた。 「熱があるな……ちょっとさっきかすった傷口を見せてみろエル」 エルは、黙って左手を出した。 袖をめくると 「毒だな……」 「ちゃんと毒は、抜いたし薬も飲んだから平気だ……」 エルは、そうは言っているが足がさっきらおぼつかない。 インプは、アッシュレイに 「知り合いの家とやらはまだ歩くのか?」 っと訊いた。 「いや、あそこの煙が上がっている赤い屋根の酪農だ」 アッシュレイの指を指す方角には確かに煙が見えた。 インプは、 「よし!」 っと、一言言うとかがんでエルをおぶった。
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