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11~ジタル夫妻
家に住んでいたのは酪農を営んでいるジタル夫妻だった。アッシュレイの話を聞くなり気持ち良く我々を中へ招き入れてくれた。
中は、ログハウス的な木の温もりがあり暖炉にはもうもうと炎が上がっている。そのリビングを中心に台所と部屋が三つほどあり広々とした造りだった。
インプは、奥さんの用意してくれた客間の寝室にエルを寝かせてやった。
インプは、エルの額をさわると
「だいぶん熱が高いな……」
っと言ってベッド横の床に腰をおろした。
奥さんは心配そうに覗くと
「それは、いけないわ。今、氷のう持ってくるわね」
っと、慌てて台所へ向かった。
アッシュレイには、ありがたいことにもう一つの寝室が与えられ、今はご主人とリビングのテーブル席で何やら話し込んでいるのが聴こえてきた。
「中央カトリックは、そんな事になっているのか……」
ご主人は、神妙な面持ちをして言った。
「俺達は、命からがら逃げて来たんだ。俺は明日には、ここをたち大聖堂へばれぬように向かう。あの二人も長居は出来ないがしばし世話を妬いてくれると助かる……」
アッシュレイは、頭を下げた。
「もちろんだとも」
体格の良いご主人は、人が良さそうに微笑んだ。
寝室で話しを聴いていたインプは申し訳ないと思ったが、今はこの夫妻の言葉に甘えるしかできない。
奥さんは持って来てくれた氷のうをエルの額に乗せると、
「インプさんもお料理食べて来なさいな。冷めてしまうわよ。その間エルヴェラさんは、私が見ているからね。」
そう優しく言ってくれた。
「いや、でも……」
「汗もかいているし、着替えさせてあげたいのだけど~あなたがそれもやる?」
奥さんは、笑った。
インプは、慌てて
「いえ! お願いします!」
っと、言って部屋を出た。
リビングのテーブル席にインプが座るジタルが葡萄酒をグラスに並々ついでくれた。
「あいつにいじめられて来たな?」
ジタルがニヤニヤしながらインプに言った。
「いや、そんな。すみません色々お世話になって……」
インプは、頭を下げた。
「おりゃあ~悪魔ってもっと禍々しい奴らだと思っていたがそうじゃない奴もいるんだなぁ。アッシュレイは、明日には、ここを立つと聞いたがお前達は、これからどうするつもりなんだ。追われている身なんだろう?」
つまみのチーズを口に放り込みながらジタル夫は言った。
「つてがありますので大丈夫です。エルの具合が良くなり次第我々もここを出ます。」
「そうか、ここも絶対安全とは言えないからな。
さて、俺は明日もはやいからもう寝るが嬢さん、はやくよくなると良いがなぁ」
ジタル夫は、そう言って立ち上がるとグラスを片手に自分達の寝室へと入って行った。
「俺達も、はやいとこ休むか」
「そうだな」
インプもアッシュレイもそうして寝室へ下がった。
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