9人が本棚に入れています
本棚に追加
12~因果
寝室へ入ると奥さんがこちらを向き
「目を覚ましたよ」
っと、微笑んだ。
インプは、エルの寝ているベッドへ駆けより
「エル……良かった……」
っと、ホッとしてにっこり笑いかけた。
「あとは、任せるわね」
「ありがとうございます」
インプにそう告げると、奥さんは、静かに寝室出てドアをしめてくれた。
「エル、大丈夫か?」
インプは、ベッド横の椅子に腰掛けてから訊いた。
「さっきよりは、大丈夫」
「エル……」
インプは、自分の右耳につけていた赤いクリスタルのピアスを外すとエルの左手にそれをそっと置き
「お前にやるよ」
っと、言った。
「インプ、いいえ。ノヴァ。
やっぱりあの時、神父さんなのね貴方は……」
「そうだ。ずっと隠しててすまない」
「俺は、大聖堂の神父で人間の時はノヴァと呼ばれていた。俺は、マシューのしている悪行をとめたくて裏で仲間達と色々手配していた。しかし、俺はどういう訳か仲間達と共に奴にはめられてしまった。
そのピアスは、マシューに没収された俺の大切な物だ。火破りになるほんの数時間前、お前はそれをマシューからこっそり取り戻して俺につけてくれた。そして地下牢で俺達仲間の為に泣いてくれたんだ」
「そう……私は、あの時、大聖堂で研修があって数日だけ滞在してたんだ……ごめんなさい。助けてあげられなくて……」
「当時、子供だったお前にどうこう出来るなんて誰も思ってないよ。さぁ、まだ熱あるんだし今日は、ゆっくり休もう。俺は、横のベッドで眠るから何かあったらすぐ起してくれてかまわないから」
「ありがとう……」
エルがノヴァにお礼を言うと。
ノヴァは、ランプの炎を消して自分のベッドへ横になった。
そのうち、ノヴァのスースーと言う寝息が聴こえてきた。
エルは、熱がある頭で当時の事を色々思い出していた。
あの当時からマシューは、「神の名のもとに!」とか言って魔女狩りを自分の思うがままに進めて行った……
けれども、その残虐な手口で人々を死においやっていった。恐ろしく頭の廻るマシューは、自分の同僚はおろか気に食わないもの達を何かと理由や罪をつけて皆殺しにして行った。まわりもあまりの恐ろしさに何も反論できず、町の人々はおびえて身を隠したり見て見ぬふりを続けてきたのだ。
明日は、我が身の命が危ないかもしれないのだ、それが賢い生き方だろう。
さぞかし私とノヴァは、マシューの良い的であり標的であったのであろうな。
なんの因果でこうして私はあの時の神父と共にいるのであろう。人の人生とはわからないものだな。
フッ
っと微笑みエルはまた、そうして深い眠りに落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!