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14~へたれ
テーブルの上には、甘いクッキーと湯気がたつ珈琲が並んだ。
ノヴァは、暖かい珈琲を一口飲みそれをまたテーブルに置くと口を開いた。
「姉さん、この娘の……エルの毒がちゃんと抜けているか看てやってくれないか?」
「良いけど、この子は貴方の何?」
ルナは、チラリとエルを見て尋ねた。
「教会に居たがある時魔女だと疑われて今は俺と逃走中だ。ちなみに俺の嫁さん候補だよ」
「……あんな事言ってるけど本当?」
ルナは、親指でくいくいっとノヴァを指差しながらエルに耳打ちした。
「前半は良いけど、後半は誤りがあります」
とエルは無表情で答えた。
「つまり弟の独りよがりの恋なのね。わかったわ」
ルナは、ノヴァを一瞥した後エルの腕を持ち
立ち上がると「こっちに来て!」っと
さっさと奥の部屋に連れて行ってしまった。
「悪かったな、独りよがりの恋で……」
ノヴァがボソボソと独り言に聞こえない独り言をこぼしたのでセリムは、苦笑いしながらノヴァに久々に矢狩りしないかと誘ってみた。
しかして二人は、夜になる前に夕食のおかずをとりに外へと繰り出して行った。
―☆―☆―☆―
一方、部屋の奥へと入ったエルはルナと向かい合う形で椅子に腰掛けていた。
部屋は、普通の内科病院の診察室になっているようだ。薬や消毒の独特の臭いがする。
エルは、お腹にひんやりとした聴診器を当てられて少し顔を歪ませた。
「う~ん、腸が少し動いているみたいだけど熱も下がってるし後は、汗をかいたり尿を出したりして毒を身体から排出する他はないかもねー」
ルナは、机のカルテにサラサラと異国の文字を書きながらそう言った。
「それより、貴女……ノヴァなんかと一瞬にいて大丈夫?」
「それは、どう言ったことについての大丈夫って事ですかね? 私は、ノヴァと少女の時代から旅をしていますが一度もあちらは、私の嫌がるような事はおろかむしろいつも私を助けてくれています。悪魔なんて思えないくらいの善人って感じです」
ルナは、はぁっとため息をついた。
『あの、へたれロリコンが……』
しばしの沈黙の後
今度はエルがルナに訊くばんだった。
「お姉さんは、魔女狩り将軍マシューなどに追われたりはしていないのですか?」
「……魔女の疑いをかけられ捕らわれ連行されそうになっていたところにノヴァが来て私を庇ってこんな山奥に連れて来た。その頃には、すでにあいつは悪魔になっていて私は、どうしてやって良いのかわからなかったわ。あいつは、何も詳しく教えてくれなかったしね。私も、マシューへ復讐を望んでいるのかとも思っていたけど……」
『目的は、貴女だったみたいね~。ちょっと安心したわー』
クスリと笑うとルナは、椅子から立ち上がり戸棚から薬を一つだしてくれた。
「心配ならこれを夜に一回飲むと良いわ」
「ありがとうございます」
エルは、ルナにお礼を述べると自分も立ち上がりもとのリビングへと二人で戻ったのである。
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