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01~エルヴェラ
17世紀ドイツ。
とある町の町民達が、ある魔女の賞金の値がつり上がったのを見ながらざわざわと話しているのが聴こえてくる。
「魔女・エルヴェラの賞金が一千万につり上がったぞ!」
「エルヴェラを捕まえれば食うのに困らなくなるな!」
「バーカ! お前達素人に捕まるくらいならとっくに捕まってるだろ。捕まらね~からこの賞金の額なんだしよ~」
エルヴェラとは、カトリック教会に背くような罪を起こし今も逃げ続けている悪名高い魔女である
外見は、ふわふわの金髪を肩くらいになびかせ、
サファイアブルーの瞳を持つ女性である。
のんびりお茶の時間を楽しんでいたエルヴェラはそんな町民達の話しに聞き耳をたてていた。
「しっかし、エルヴェラってのはこんなにべっぴんさんなのかぁ? おりゃあ、一度で良いからこんなべっぴんに相手をして貰いたいぜ!」
ゲスい話しを、するオヤジ達を睨めつけながらエルヴェラは、口にケーキの残りを突っ込んだ。
そこへ、
「エル~……」
っと、一緒に旅をしているペットのインプが慌てた様子でテーブルにビラを置いた。
インプは、人がたの身体をしており今は手のひらサイズである。髪は、漆黒に赤い瞳が怪しい光をやどしている。まわりには、悟られぬよう魔法をかけていて普通の人間には姿は見えてはいない。
ビラは、たった今騒ぎになっていた賞金首のリストであった。
「あぁ、これならほら、そこにもあるぞ」
エルヴェラは、後ろ手でクイッと指差し言った。
「私の株も上がったもんだねぇ」
「ちょっと、エルッ! そう言う問題じゃッ!!」
インプは、黒い翼をバサバサとさせながらアワアワとした様子で言った。
「んな、慌てることないわよ。今だってこうして普通にお茶を楽しんでいても全然私だってばれていないんだしね。当然狙われる事は多くなるかもだけど望むところよ! 私は……」
エルヴェラは、お茶を飲み干すと立ち上がりインプとともに歩きだした。
数年前、エルヴェラはなんの罪もないのにカトリック教会のエクソシスト達に捉えられた。腕が折れて、見逃してくれといくら泣いても拷問は、数日続けられた……
そんな、私は悪魔でもなんでも良いから助けれくれと天に願ったのだった。
その頃、ドイツでは、マシュー・ポプキンズと名乗る男、通称、魔女狩り将軍率いるエクソシスト集団が中央カトリック教会を牛耳っており、魔女だのなんだと難癖を付けられた罪なき者達が次々と火破りや拷問にかけられていったのである。
エルヴェラは、マシューにより魔女の疑惑にかけられてしまった一人である。
「私の目的は、奴の息の根をとめること。
私の目的がすんだら、私が死んだときに貴方に魂を捧げるわ好きにしてくれて構わない。あの時、あの場から逃げられたのはインプのおかげだから……」
エルヴェラは、川が流れている橋の上で足をとめてインプにそう静かに告げた。
季節は、秋にさしかかっており、風はひんやりと冷たくなってきていた。ヒラヒラと舞う落ち葉が一枚また、一枚と川を流れて行くのを、エルヴェラは、インプとぼんやりと眺めていた。
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