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02~小さな少女
水色のワンピースを着た茶髪の少女は、おつかいの帰りにアイスを食べながら歩いていた。そこへ、居酒屋から気分良く浮かれて出てきたエクソシストのいかにも格下そうなガラの悪い男に、ぶつかってしまった。男の制服のズボンにはべっとりとアイスがついてしまっている。
エルヴェラは、呑気に川を流れて行く枯れ葉を眺めていたのに雰囲気をぶち壊すように、怒声が響いてきたのだ。
「お願いです。見逃して下さい。許して下さいッ!」
辺りに、6歳くらいの少女のかそぼい声が響いた。
エルヴェラが見ると少女は、いかにも格下そうなエクソシスト三人に難癖をつけられている。まわりで見ている町民達は己が巻き込まれるのを避けたいのか、遠巻きからその様子を眺めるばかりである。
エルヴェラは、顔を見られぬように茶色いローブのフードを深々とかぶり、エクソシスト達の背後に近づいた。
ボコッ! バキバキッ!
数秒たたぬうちに、男達はボコボコになった!
エルヴェラは、驚いてしりもちをついている、少女を軽々と抱え上げると全速力で、その場から逃亡した!
空は、夕暮れ。
エルヴェラは、エクソシスト達が追ってきてない事を確認してから路地裏にそっと少女をおろした。
「追っては、来てないようだ」
家々の間からそっと今来た道を眺めてエルヴェラはそっと言った。
少女は、
「ありがとうございました」
っと、エルヴェラにペコリて頭を下げた。
「怪我がなくて良かった。お前家は? 送ってやるよ」
エルヴェラは、優しく微笑むと少女の頭を撫でてやった。
「おうちは、あっちの畑の向こうです。家は、農家で私はおじいちゃんと二人で暮らしています」
少女は、そう言って家への道を歩いて行く。
小さな手を引いてやると少女の手はまだ小刻みに震えていたが、やがて震えも消えて暖かいぬくもりに変わった。歩いておしゃべりをするうちに少女はだんだんと落ち着いてきたのか少しずつ自分の事を話してくれ名前は、サンであることを知った。
家につくと少女はおじいちゃんに事の成り行きを事細かに話した。それを聞いたサンのおじいさんは、エルヴェラに感謝し今日は、泊まって行くようにと進めた。今夜の泊まる場所もまだみつかっていないエルヴェラは、お言葉に甘えることにした。カバンの中では、小さなインプがすやすやと寝息をたてている。
晩御飯には、ミルクのたっぷり入った野菜たっぷりのシチューが出てきた。
「これは、美味しそうですね」
エルヴェラは、出されたシチューを眺めて嬉しそうにした。
「この野菜は、私とおじいちゃんがたんせいこめて育てたものなの。だから、絶対おいしのよっ!」
サンは、エルヴェラの椅子の隣に座るとポンと自慢気に自分の胸に手をおいた。
「そうか、なら味わってゆっくり食べるとしようか」
エルヴェラは、そう言ってスプーンですくって白いスープを口に流し込んだ。
「うん。とっても美味しいよ。ありがとうなサン」
おじいさんとサンは、満足そうに顔を見合せて笑った。
久しぶりに楽しく暖かい食事をエルヴェラは、心地よい気持ちで楽しんだ。
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