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03~少女の祈り
エルヴェラは早朝からサンとともに畑に来ていた。畑には、収穫時期のカボチャやら人参やらが沢山なっていてなかなか収穫するのも一苦労だ。
「泊めてもらったお礼なんだ。手伝うよ」
エルヴェラは、そう言ってカボチャの上の茎をハサミで切り落としていった。
「お嬢さん達、これは美味しそうなカボチャだなぁ」
振り返ると、三人のエクソシストの男がいつの間にやらいた。
「あんた達……」
エルヴェラは、立ち上がり男達を睨み付けた。
少女は、私の腕をぐっと心細そうに掴んだ。
男達は、丹精こめて育て上げたカボチャをバキバキッ!と踏みつけて歩いてくるとエルヴェラからフードをひっぺがした。
「クッはぁー、やっぱりそうだ。こいつ賞金首のエルヴェラですぜぇ兄貴ぃ!」
下っ端の一人が兄貴面をしている奴に言った。
「こいつは、良い。こいつら二人を中央のカトリック教会につき出しちまえば俺達も……クックッ」
兄貴と言われた奴がゲスく笑った。
エルヴェラは、クックッと自分の目の前でいやらしく笑っている男のみぞおちに、力強く膝蹴りをくらわせてやった!
「ゲスが何人集まっても同じね。こないだ私にボコボコにされたの忘れた訳?」
エルヴェラは、前のめりで咳き込んでいる兄貴を見下した目で言った。
「きさまぁ~っ!」
下っ端の一人が、エルヴェラ目掛けて突出してくる。エルヴェラは、くるりと身をかわすと
「はい、ここ、頸動脈ね」
っと、持っていたハサミを男の喉元にあっさりと突き付けた男達は、さっきまでの威勢は何処にいったやら、降参だと両手を皆で上げた。
「エルさん、すごい……」
少女は、素直に尊敬の眼差しをした。
「くっそ!」
男達を、手早く縄で拘束したエルヴェラは、インプにカバンから出てくるように言った。
「なんだいエル?」
「良い餌が手に入ったぞインプ。
こいつらの今までの記憶を奪い。私達に都合良いように何か吹き込んでやろう」
インプは、今でこそ手のひらサイズの悪魔だが実は人間の記憶やらの気を吸い込めば成人男性くらいには変身できてしまったりする。
「人間の男かぁ。出来たら綺麗な姉ちゃんのが良かったぜ」
インプは、クックッと笑うと青い顔をして悲鳴をあげる男達から記憶を奪った。
エルヴェラが、男達の耳元でなにやら呟くとその場からすくっと立ち上がりフラフラと元いた自分達の来た方角へと歩いていった。
「インプ、お前ちょっと気を吸いすぎたんじゃないか?」
エルヴェラは、成人男性くらいになってしまったインプにそう言った。
「あれくらい懲らしめなきゃダメだろう。あいつら」
インプは、男達の背中を見送りながら言った。
「確かにな」
エルヴェラは、そう言って木の後ろに隠れていたサンに
「サン、悪い恐かっただろう。私は、このままこの町を出るよ。カボチャダメにしてごめんな……」
そう言って、エルヴェラは町から出るための一歩を踏み出したのだが……サンに右腕を引っ張られて振り返った
「サン?」
「エルさんは、あのエルヴェラなの?」
少女は、恐る恐る訊く。
「そうだ……私と一緒にいればお前達にもいずれ被害がおよぶだろう。すまないな」
エルヴェラは、そう言って少女の腕を優しくはなすと
「飯旨かったよ。ありがとう。じゃあな」
っと、言ってその場から去った。
少女は、
『あの人が、悪名高い魔女なんて絶対嘘よ……
神様、どうかあの人をお守り下さい』
っと、だんだんと遠くなるエルヴェラの後ろ姿をみやり祈ったのである。
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