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04~魔女の微笑み
エルは、この国の一般的な朝食である、パンにコーヒーを食していた。パンを小さくちぎりそれを、コーヒーに浸してから口に運ぶ。インプは食事はとらなくても特に問題ない身体であるが一緒にコーヒーをすすっている。
「マシューの奴また魔女を一人火破りにしたらしいぞ。この新聞みてみろよ……」
インプは、テーブルに新聞をポスッと置くと記事を指差し言った。
「無差別殺人も良いところだな……」
エルは、顔は歪めた。
当時5歳でストリートチルドレンだった私は、カトリック教会に引き取られた。生涯教会につかえることを約束し、教会の為にひたすら尽くしたきた。
しかし、六年前マシューが中央カトリック教会に来てから周りに異変が起こり始めた。
マシューが魔女狩りと称した、殺戮をはじめたのである!
まわりの女・子供達は罪なき罪をきせられ、拷問され終いには大衆の前で火破りにされていった。当時10歳であった私も罪なき罪で拷問をうけた一人である。
今、現在も両腕には擦れて酷くなった傷痕が醜く残る。
その傷痕の残る腕を服の上から苦々しげに見つめるエルの顔に、インプはなんとも言えない気持ちになり口を開いた。
「エルよ~。正直俺はお前の魂をもてあそぶような下品な悪魔じゃないんだぞ。仲間のゲス悪魔達ならまだしも俺は、どちらかと言えばお前と血の契約を交わしたいくらいだと……なんども言っておるのだが……」
インプは、赤くギラリと光る瞳で熱っぽくチラリとエルを見て言った。
「……インプ。私は、お前のお嫁さんになる気はまったくない。当時、私を助けてくれたのには本当に感謝しているがそれとこれとは、話が違うよ」
エルは、困り顔でインプにそうかえした。
そう、このインプは当時呼び出した私にあろう事か一目惚れしたらしい。どこが良いんだ?っと問うたら、俺の事を好きにならなさそうなところだと言われた。
訳わからん……
「そうか、それは残念だ」
インプは、にんまり顔で言った。
こいつは、ベタベタとひっつくような女より冷たい言われかたをした方が好きらしく。今も、残念だと言うくせに顔は、めちゃくちゃにやけている。
『私は、とんでもない奴を旅の相棒にしてしまったらしい……』
後から思ったところで後の祭りであるが……
いやしかし、マシューの手により亡くなるくらいならばこのインプと地獄に落ちるほうがよっぽど私は、幸せだ。
それだけは、絶対に揺るぎない真実である。
「何を、さっきから俺の顔を見て微笑んでいる?」
インプに片頬をさすられたエルは、
「なんでもないよ……」
っと、にっこりと笑いかえした。
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