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05~協力者
朝食を食べ終えたエルとインプは、ある知り合いへ会うため林道の中を歩いていた。草や枝をかき分けてようやく視界が開けたそこには、朽ち果てた教会が一件あった。
「密会場所はここか?」
後ろを歩いていたインプが言った。
「そうだ、この教会はけっこう昔に山火事があって一緒に燃えてしまってからは使っていない。マシュー達に見付からぬように密会するにはまさにうってつけの場所なのさ」
エルは、教会に入る扉の前に立つと三回ノックをした。
すると、見知った顔のエクソシストであるエリックが顔を出して中へエルとインプを招き入れた。
エリックは、エルと同じ年くらいにカトリック教会に引き取られた男でエルとは兄弟みたいに育った。こいつは、マシューの行動に疑念を持っておりエルの数少ない仲間と言ったところである。外見的特徴と言えば短髪の金髪で淡い水色の瞳をしている後は、エクソシストの制服をきているくらいだろうか。
「久しぶりだな、エリック」
エルは、エリックと軽いあいさつをかわした。
教会の中は、皆似たり寄ったりの造りである。ただ今いるのは、クモの巣が垂れ下がり上も下も煤だらけなので衛生的にはあまりよろしいとは言えないが……。
「エルもインプも元気そうで安心しました。隣町の様子はいかがでしたか?」
エリックは、そう言いながら二階へと続くドアをあけ階段を上がっていった。部屋に入るドアを開けると中にはテーブルが一つと長椅子が二つありそこへエルとインプは、座った。テーブルには、葡萄酒瓶が一つにグラスが三つありエリックは、親切にインプと私に葡萄酒をたっぷりと注ぎ入れてくれた。
「いつもすまね~なぁエリックの兄貴! 俺はこれが好きでなぁ」
インプは、そう言ってグビグビとそれを煽った。
「存じ上げてますよ。インプさんいつもエルに振り回されて大変でしょう……」
エリックは、インプの耳元でそう囁いた。
「……おい! 聴こえてるぞ!」
エルは、二人を睨み付けた。
「エリック! インプにあんまり飲ませないでくれ後で酔いつぶれても私は、知らないからなッ!んで、本題にさっさと入ってくれないか? わざわざ私にこっそり文を寄越して来たんだから余程の事が教会であったんだろ?」
「そうではない。っと言いたいところだが、残念ながらその通りだ。このところ中央では、魔女ばかりではなく黒い服装をしていただけで人々は火破りや拷問を受けはじめているんだ。マシューの奴は、ただの中央カトリックの独裁者だよ」
「ひどい話しだ……」
インプは、悪魔の割には妙に人間らしい表情を時より見せる。
「私には、マシューの奴のがよっぽど悪魔に見えるよ」
エルは、自分も葡萄酒を一気に飲み干すとグラスをテーブルに力強く打ちつけて
「絶対に奴の悪行を我々の手でとめるぞっ!」
っと言い放ったのである。
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