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07~奪還
エルとインプは地下水道の中を一時間程歩いていた。水が横に流れているので中は冷たい空気がながれており、時よりピチョンッなどの水音が聴こえてくるので不気味さは、満点である。
「こういう場所っていかにも死体とか出てきそうだよな」
インプが言う。
「確かに……まぁ、今さら死体とか見たくらいで喚くほどの乙女ではないができたら遭遇したいものではないな」
エルは、ランプを片手に持ち、たまに右や左へと進路を変えつつに前へ進んで行った。
「こんな複雑な道よく覚えてるなエル」
「こんなのは、一度通れば忘れないと思うが」
『そんな奴、なかなか居ないと思うぞ……』
「この、上に続く梯子の真上がちょうど中央カトリック教会なんだな?」
インプは、梯子に片足をかけるエルに確認をとるように訊いた。カンカンと、金属音をたてながら上を目指すエルは、
「そうだ……」
っと、一言応え、真上にあった黒い格子蓋をカタっと少し上にあげてそのまま横にスライドさせ音をたてぬようにそっと開けた。
顔を半分覗かせ、誰も居ないと判断したエルは、無言でインプを右手で手招きした。
中は、妙に薄暗く大きな棚が縦横に並んでいて涼しい。
「霊安室だ。ようするに棚の取っ手を引けば遺体がゴロゴロ出てくる」
インプがマジか……
って、顔をしている横を通り過ぎ銀の扉のノブを回して開けたエル。
霊安室の向こうは、アーチ状のトンネルのようでレンガで造られていた。
エルは、後ろのインプに
「このまま、何ごともなければ良いが。万が一にでもエクソシストに見付かった場合は、インプに一つだけ忠告しておくが、目を閉じておけとだけ言っておく。後は、私が捕まったとしても構わず逃げてくれ」
っと、告げた。
「前者は、了解。後者は、絶対やだ……」
インプは、そう言って何か言いたげなエルを無視して前方を、指差した。
前方は、薄暗いがわずかな光が横から漏れだしていた。
光の向こうは、罪を犯した者達が幽閉されている牢屋になっている。
エルとインプは、互いに頷きあうと前方に、そっと見付からぬように顔を向けた。
牢屋の中には、一人の赤毛の男性が横たわっていた。
警備にあたっている男は、二人いてその上の一人が
「はやく、本当の事をはいてしまえば鞭などで拷問を受けずともそのまま楽に死ねたのだぞアッシュレイよ」
っと、嫌味たらしくニヤニヤしながら言った。
アッシュレイは、弱々しくうつぶせの状態からやっと起き上がりあぐらをかくと、
「俺は、何も悪い事などしておらぬし、ましてや魔女の仲間と言われるなど屈辱だ! 貴様の主人の方こそむしろエクソシストにあるまじき事をしておるのではないのかッ!?」
っと、威勢よく毒づいた。
「きっさまぁ――ッ! マシュー様になんたる事をぉっ!」
牢屋の方向を見て、ギャンギャンと吠えている監視二人は、背後に近づくエルとインプにまったく気づいていなかった。
首筋を二人に打たれ崩れ落ちる監視達は、なんともあっけない。監視二人は、縄でぐるぐる巻きにしてインプに縄をもたせ、エルは監視のズボンから鍵を取り上げるとアッシュレイを、牢屋からあっさりと出して変わりに監視二人を牢屋にぶちこんだ!
もちろん、奴らの服装を自分たちのものとそっくりとり変えて。
「ヒュー、やるな~あんたら……」
アッシュレイの先ほどの監視への態度は、どうやら自分へと引き付ける演技であったらしく、アッシュレイは、二人に感謝を述べたのである。
「あんたの演技力も、なかなかだったぜ」
インプは、そう言ってアッシュレイに肩をかしてやる。
そうして、三人はさっきほど来た道を引きかえす為、歩きはじめた。
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