1.婚約破棄、そして新しい嫁ぎ先

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1.婚約破棄、そして新しい嫁ぎ先

「婚約破棄だ、イリス。空気のように地味な君よりも、華やかで愛らしい(アイリア)を妻に迎える」  婚約者であるストレリツィ侯爵子息、ミハイル様の御宅の客間にて、私は藪から棒に婚約破棄を告げられました。 「ごめんなさいお姉様。決まったことだから」  妹アイリアは髪をいじりながらぞんざいな謝罪を口にしました。  一緒に訪問したはずのアイリアは、いつの間にかミハイル様の隣に座ってしなだれかかっています。 「イリス、君は妹に嫉妬して彼女の社交を邪魔していたそうじゃないか」 「それは……」 「いい訳なんて聞きたくない。姉という立場でありながら、妹の幸せを妬むなんて信じられない」 「いいんですミハイル様。お姉様は周りの皆から私の影とか、空気とか言われていて傷ついていたんです」 「だからってアイリアを蔑ろにしていい理由にはならない! ああ、優しいアイリア……」  ミハイル様に抱きしめられ、妹はふふん、と足を組み、私を見下して微笑んでいます。  ああ。お行儀が治らないから社交界もぎりぎりまで遅らせて、必死で教育していたというのに。  ミハイル様は私が嫉妬で妹が表に出ないようにしていたと思いこんでいます。  妹も勿論そう思っているのでしょう。  不意に、以前妹に言われた言葉が思い出されます。 ――お姉様の婚約者のミハイル様、美男子ね。空気のお姉様が見えなくなっちゃうくらい。  あの時から妹は、婚約者を意識していたのだと私は漸く気付きました。
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