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一人旅と噂(一)
(やっぱり、偶然とは思えないな)
晴道は精悍な顔を顰めていた。
柔らかな陽気の中、道をゆく彼は、この時二十六才。一人で旅をするようになって、六度目の春を迎えていた。
その間、様々な土地を巡り、奇妙な困りごとに手を尽くしてきた。つまり、術師として、立派に怪異と対峙しているわけだ。
そんな晴道は、一晩宿をとった町を後にし、街道を進んでいるところだった。先ほどから、ずっと思案を続けている。
(同じようなことを耳にするのは、あの町で三件目だ)
それは、年端もいかぬ子どもが突然亡くなったという話だ。近くの町村で、そんな不幸を立て続けに聞いたのは、ここ十日ほどのことである。
(どの子どもにも、病の兆しはなく、事故に遭ったわけでもない。共通しているのは、皆、人通りが少ない場所に倒れていたことと、手に何かしら食べ物を握っていたこと)
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