8人が本棚に入れています
本棚に追加
ある申し出(一)
翌日、晴道が陽次郎の家を訪れた。
陽次郎は彼と共に、父母と兄、幼い弟妹と向き合う形で座る。
「半年ほど、私に陽次郎君を預けていただきたい」
そう持ちかけた晴道に、家族は思い切り面食らった。
「それはまた……一体なぜでしょう?」
父親の問いに、青年はさらりと答える。
「彼が、異形を見分ける目をもっているからです」
「え……」
家族はもちろん仰天だ。ここで、晴道が利一郎に視線を移した。
「最近、村に猿の群れが現れたと聞いた。子どもだけでいた時に見つけたとか」
話を振られて、我に返った長男が頷いた。
「そうです……あ、でも、陽次郎だけは猿じゃないって言ってたかな。確か、きらきらしてるとか」
晴道が口の端を上げる。
「ああ。彼の目には、雪のような白い毛並みで、光を纏った姿に見えたらしい。物の怪か、はたまた神使の類か……少なくとも、ただの動物じゃない。そのことを、彼は見抜いていたわけだ」
最初のコメントを投稿しよう!