ある申し出(一)

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ある申し出(一)

 翌日、晴道が陽次郎の家を訪れた。  陽次郎は彼と共に、父母と兄、幼い弟妹と向き合う形で座る。 「半年ほど、私に陽次郎君を預けていただきたい」  そう持ちかけた晴道に、家族は思い切り面食らった。 「それはまた……一体なぜでしょう?」  父親の問いに、青年はさらりと答える。 「彼が、異形を見分ける目をもっているからです」 「え……」  家族はもちろん仰天だ。ここで、晴道が利一郎に視線を移した。 「最近、村に猿の群れが現れたと聞いた。子どもだけでいた時に見つけたとか」  話を振られて、我に返った長男が頷いた。 「そうです……あ、でも、陽次郎だけは猿じゃないって言ってたかな。確か、きらきらしてるとか」  晴道が口の端を上げる。 「ああ。彼の目には、雪のような白い毛並みで、光を纏った姿に見えたらしい。物の怪か、はたまた神使(しんし)(たぐい)か……少なくとも、ただの動物じゃない。そのことを、彼は見抜いていたわけだ」
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