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ある申し出(二)
晴道は真面目な顔に戻って言い添える。
「彼の才は、術師にも通じるものです。分かるからこそ、厄介事に巻き込まれることもある。ならば、それらと渡り合う術を心得ていたほうが、何かと良いでしょう」
「でも、何も旅に出ることは……」
渋る様子の母親へ、陽次郎は前のめりに告げた。
「おれがついていきたいって頼んだんだよ」
いつ家を出ることになるか知れない次男という身だ。それなら、今、この人に師事したい。
家族は、なおも困惑気味だ。
弟妹には難しい話題とみえたが、それでも、大事な話であることは分かっているようだ。普段であれば、退屈で落ち着かなくなる頃だが、今日はちょこんと座ったまま大人しい。
父親が、腕組みをして唸った。
「そうは言っても、足手まといになりかねんぞ。怖がりなお前が、一緒に行けるような旅じゃないだろう」
すると、これに、いち早く返したのは晴道だ。
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