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移りゆく(一)
それからの月日は、瞬く間に過ぎていった。
少年は、無事、家族に送り出してもらえたのだ。
すべてが新鮮で目まぐるしい日々。それでも元来、忍耐強く、学ぶ意欲にも満ちていたのだろう。音を上げるどころか、晴道の教えを反芻するのに忙しくしていた。
そんな調子であったから、吸収の早さは晴道も目を見張るほどだった。
結果、半年後に再び陽次郎の家を訪れた際、晴道は正式に彼を弟子にしたいと願い出た。
家族にも、陽次郎がぐっと大人びたのが見てとれたようで、何より当人の心が変わらなかったものだから、この話は存外すんなりと決まった。
改めて、二人は並んで家を出た。そばを流れる見慣れた川は、いつも通り穏やかだった。まるで供をするように、道の先まで続いている。
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