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移りゆく(二)
「……はじめは、家に帰すつもりだったんだけどな」
幾らか歩みを進めた頃、晴道はそう白状した。
「おれは、これからも師匠に色々教えてもらえると思うと嬉しいです」
陽次郎が屈託なく笑ってくるものだから、晴道はさらに弱り顔をした。
「それだよ、それ。お前が早々に師匠なんて呼び始めたもんだから、俺もいつの間にかその気になっちまったんだ」
言うと、少年はまた笑う。
息をついた晴道は、不意に道を逸れて川原へ下りた。そのまま、さっさと手頃な岩に腰かける。
「あれ? 歩き始めたばかりですけど、もう疲れたんですか?」
「いや、ちょっと落ち着いて話がしたくてな。ほら、お前も」
晴道が隣の岩を指すと、陽次郎も黙ってそれに従った。
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