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仕来たり(一)
すぐ近くの道では人々が行き交っているが、ここは静かだ。さらさらという川の音を聞きながら、晴道は口を開いた。
「さて。今日で正式な師弟になったわけだが。俺たち術師にも、ちょっとした仕来たりがある」
「仕来たり?」
首を傾げる少年に、真っ直ぐな眼差しを向ける。
「師から弟子へ、新しい名を贈るんだ」
それは、術師となった証――この半年で少年の才と覚悟を認めた晴道は、少し前から良い名を熟考していたのだ。
「随分悩んだんだからな」
そう言って苦笑すると、陽次郎が居ずまいを正した。
晴道は言葉を紡ぐ。
「これから、お前の名は“玉瀬”だ」
宝石を指す“玉”に等しく、澄んだ心根で物事を見極めていってほしい。
そして“瀬”は、少年を育んだ地の穏やかな川――原点の風を、そっと忍ばせておいたのだ。
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