仕来たり(二)

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仕来たり(二)

 この時代、男子であれば庶民でも、成長や立場の変化によって名が変わる例はあった。とはいえ、まだ幼い少年は、新しい名の重みと共に“陽次郎”でなくなることに一抹の寂しさも感じたようだ。  瞳を揺らしつつ、確かめるように、口の中でその名を転がす。 「玉瀬……おれの名前……」  そんな彼を眺めながら、晴道は思った。自分はこの子とは真逆だったな、と。  晴道は、元の名を煩わしくすら感じていた。  それを見抜いた師は、名付けの時に言ったのだ。
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