一人旅と噂(二)

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一人旅と噂(二)

 食べ物には噛った跡があり、子どもが口にしたのだと思われた。ただし、晴道は現物を見ていないので仔細は知れない。  何者かが毒入りの食べ物を与えたか――町村の人々はそう考えて、ひとまず、貰い物をするなと子どもらに厳しく言い聞かせているという。そんなことをする者の意図が見えぬから、彼らは余計に気味悪がっていた。 (人の所業か、はたまた怪異だろうか?)  晴道も、その正体や目的を掴みあぐねている。  ただひとつ分かっているのは、被害が真っ直ぐ北へと動いていること。だから、ひとまずその方角を辿っているのだ。 (とにかく、目に入った町村に手当たり次第立ち寄って、確かめるしかないな)
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