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天啓よ、来い。
今、僕の目の前には3本のエビフライがある。
迷う。
もし、この僕にもう少しだけはっきりとした決断力があれば、こんなに悩むこともなかったのだが、残念ながら僕はそのあたりに恵まれていないために、ひとしきり悩まざるを得ない。
ウスターソースとタルタルソース。
一体、どちらを掛けるべきなのだろうか。
駅前の定食屋で配膳されたエビフライ定食を前に、僕は悩んでいた。
お膳の上では小鉢に盛られたタルタルソースがこちらを見つめている。しかし、テーブル脇のカスターに置かれたウスターソースもこちらに気付いている。
どちらがいいのか。
一体、店側の希望としては、どちらを掛ける想定で作ったものなのだろう。店側の思惑もわからなければ、僕は今どちらの気分なのかも、全くもってわからなかった。
決断力の欠如も優柔不断さも、自分でも面倒臭い性格だとは自覚はしているし、妻にも常々指摘されたもので、自分でも何とかしたいとは思っているが、それでもやはり悩んでしまう以上、それはもう自分ではどうしようもない。
僕はただただ、どちらを掛けるべきなのか、なんらかの天啓が下ることを待つしかなかった。
こんなことで神頼みだなんて、我ながら情けなくも思う。しかし、それでも決められないのだから、僕はもう天に頼らざるを得ないのだ。
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