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しかし、待っていたところで天啓など下らないことは僕にもわかるので、また少し考えた。
普通に考えれば、迷ったなら半分ずつ掛ければ両方楽しめるので、そうすればいいのかもしれない。
でもこの場合、それは違う。
3本。
奇数だ。
1本ずつそれぞれのソースを掛けて食べ進めたとしても、最後の1本、必ずまた迷う。
1本ずつ食べてから美味しかったほうを最後に掛ければいいのかもしれないが、それでもわかる。僕は必ずまた迷う。
千切りのキャベツの隣にレモンが1切れ添えられているが、僕は酸っぱいものがあまり好きではない。
困った。
ほとほと、困ってしまった。
何故もう少し奮発して4本にしなかったのか。あるいは、サービス精神など出さずに2本としなかったのか、全くもって店主の思慮の浅さを恨めしく思うしかない。
しかし、僕にもう少しだけ決断力、あるいは強い意思があれば、こんな苦しみを背負う必要は無かった。なのに、何故僕はこんなにも決断力の無い人間であるのか、優柔不断なまま歳を重ねた自らの愚行を憂うしか無い。
贅沢は言わないが、もう少しだけ、決断力のある人間になりたかった。そう思うのは、既に贅沢なのだろうか。
あるいは、最後の1本は半分に切ればいいのだろうが、尻尾側と反対側では微妙に量も味も変わってしまう。僅かな差異だとは言え、僕はやはり気分良くキッチリと2等分で食したい。
しかし、このまま悩み続けていてもエビフライは冷めてしまう。それは避けなければならないことだ。結局、天啓など下らなかったわけだし、僕は涙を飲んで、最後の1本は半分に切り、別々のソースを付けて食べた。
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