揚げ物に塩

　いきなりハンバーグを真ん中から2つに割れば、肉汁が流れ出ていってしまうことくらい、普通に考えればわかるだろうに。

　端の方から少しずつ、肉汁が流れないように細心の注意を払いながら食べることこそ、正しいハンバーグの食し方であり、肉汁を閉じ込めるように綺麗に焼き上げた者への礼儀ではなかろうか。

　肉汁の流れ出たハンバーグなんて、ただのクズ肉の寄せ集めなのだ。

　何故、切る前に何らかの天啓が下り、僕の愚行を止めてくれなかったのか。

　僕は心の中で店主に詫びると共に、自らの浅はかさを深く後悔する。

　そういえば妻にも、何度も僕の思慮の浅さを注意された。

　もう少しだけ僕に思慮深さがあったなら、こんなに深い後悔の念に駆られることもなかっただろうに、僕は自身の早計さを恨まずにはいられない。

　加えて、ハンバーグの半壊に流し掛けた大根おろしソースが、付け合わせのフライドポテトを浸している。
　フライドポテトは、そのまま食べたかった。

　しかし後悔していてもどうしようもない。僕は和風ソースに浸ったポテトと肉汁の大半が抜け出たハンバーグの抜け殻を黙って食した。