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1.ルビーローズ・アスタリアは公爵令嬢である
ルビーローズ・アスタリアは公爵令嬢である。
幼いころから何不自由ない暮らしをしてきたため、彼女はいつの間にか傲慢に、そしていわゆる「悪役令嬢」になっていた。
今日も、彼女は下級メイドを叱責し、日々のストレスを発散していた。
「ふん。その桃色の髪の毛は下品ね。しかもアンタは娼婦の娘っていうじゃないの!やっぱり生まれが卑しいと仕事もできないのね。メイドは下賤な使用人らしく地にでも這いつくばっていればいいのよ!」
豪奢なドレスを身にまとったルビーローズは、その年端もいかぬ肢体に見合わないほど高いヒールのついた真っ赤な靴で、勢いよく文字通り這いつくばった桃色の髪の少女の後頭部を踏みつけた。
モノクロのメイド服を着こなす少女は、顔をうつむいていても美しい。アスタリア家の親戚と関係があったため渋々メイドとして引き取ったのだが、いかんせん何もできない。
普通のメイド仕事もできないのに、自分にはない「可愛らしさ」を持っている少女に八つ当たりをしたいのだろう。同じほどの背丈だというのに、委縮しているメイドの少女はうずくまってされるがままに蹴られている。
時折聞こえるうめき声は、普通の人ならば飛んで助けるほどの可哀想な声だが、相手が悪い。公爵家の溺愛された一人娘に注意したならば、親戚共々よくて軟禁、悪いと処刑コースまっしぐらだからだ。
ここではよくあることなのか、忙しく動く先輩メイドたちも見て見ぬふりだった。
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