人よ、憂うにあらず

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人よ、憂うにあらず

 本を読む。何度も読む。それに記された文言をすべて暗記する。  すると本にかけられた魔法によって、僕はこの本に描かれたものになることができるのだ。  一冊ごとになれるものは決まっている。だから僕は何年もかけてその本を集めて各地を回った。  そして、先日手に入れたこの本は、なんと僕を王様にしてくれるらしい。  本を読む。何度も読む。それに記された文言をすべて暗記する。  やがて僕は……いや、儂は本当に一国の王になれた。  しかし。  魔法はいつか解けてしまう。どんなに願ってもあの人に解かれてしまう。  十数時間かけて本を覚え、ようやく手に入れた魔法を、あの人はたった一言で解いてしまう。  やめてくれ。  もう少しだけ。僕を王様でいさせてくれ。  だけどあの人は言った。 「カット」
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