番犬現る

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あと少しだという所でトンネル手前の角からスカジャンを着た若者たちが何やら楽しそうにわいわいがやがやと歩いてきた。 人の幸せな姿を見ていられるほど今の私は心に余裕がない。 せっかくお酒で気分が良くなったのに台無しだと思ったのか、身体は自然と180度回転し、来た方向に向かって一歩足を踏み出していた。 すると後ろから「ねぇ、待ってよ、そこの可愛い子」と声がした。 えぇ? わたしぃ。なんて思ったのもお酒のせいだろう。 調子に乗り、振り返って彼らを見るが誰も私を見ていない。それどころか私じゃない誰かに向かって言っている。 「ちっ」 誰もこんな私には興味すら持たないことに意気消沈するとともに心底苛立ち、盛大に舌打ちをかました。 すると彼らはこちらを振り向きガンを飛ばしてくる。 「んぁ? なんだてめぇ。ババぁには用ねぇんだよ。さっさとどっか行け、ブス」 二十歳(ハタチ)そこらの男の子に言われてイラっとするのはシラフでも同じとして、メンチ切ってがに股で彼らに向かって歩いていくのはきっと極道物の漫画を朝まで読み続け、お酒に溺れたせいだろう。
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