瑞樹は瑞樹?

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誰にも読まれていない本を自分の物にした時ほど高鳴る感動はない。鉱山で宝石を見つけた時の感覚に近いのではないだろうか。この世界には数え切れないほどの本がある。その中で何か光るものを見つけて手に取る。 手に取られる数が多ければ多いほどに価値は磨かれてキラキラと輝き多くの人の手に渡る。図書館でも人気の本は多く取り揃えられる。そうやって多くの人の手に取られた本は輝いて行くのだ。 原石が埋もれてしまっていることもあるが、でもその原石を大切にしている人もいる。私はきっとそっちの方が好きだと思う。まだ注目を浴びていない本を好きになり、いずれその作家が注目された時には自分の事のように喜んでしまうだろう。 人の数だけ好きな物語や本は異なり、売れていないから、読まれていないからという理由で駄作だと決めつけられないのが書籍の世界じゃないかと勝手に思っている。 宝石だって磨かれなければ石と同じだ。でもそれらは紛れもなく貴重なものなのだ。 ルンルンで原石と磨かれた宝石を持ってレジに向かい会計を済ませて帰ろうと出口に向かうとドアの付近にある自己啓発本が私を睨んでいた。 『それでいいのかあんたの人生』
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