瑞樹は瑞樹?

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「ダメだった? 一番似合てると思ったんだけど」 「じゃなくてなんでそっちなんだ? 女の服あるだろう」 「いや、瑞樹ちゃんの服は可愛すぎてアラサーの私には無理だよ」 「あのなぁ……」 瑞樹はため息をついている。 何故そんなにため息をつくのだろうか。もしかして、男の服は全てお気に入りで誰にも着て欲しくなかったのだろうか。 「ごめん、これ着ちゃまずかった? それなら着替えるよ」 「いや、千佳がそれでいいならいいけど」 「うん。気に入った」 「ならそれやるよ」 「本当?」 「ああ」 「ありがとう」 瑞樹は何故か複雑そうな笑みを浮かべながら手に持っていたスマホを可愛いポシェットに入れて立ち上がった。 やっぱりこの服はお気に入りだったのかな? そう思いながら私も本を取り出したエコバッグを手に持って瑞樹について行く。 「待て、鞄は?」 「ないよ」 「なんで?」 「だから、トートバッグ、瑞樹と会った時に置いていったでしょう」 「今までバッグどうしてたんだ?」 私は瑞樹に持っていたスマホと財布が入ったエコバッグを差し出した。
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